緊張と緩和と臆病と大胆

書きたいことだけ

私は相対的

職場における私のポジションはとても中途半端だ。
年下の先輩も年上の後輩もいる。
年上の部下も多い。年下の部下も多い。
あ、年下の上司となるとたぶんまだいない。

私はまあまあ経験のある中堅どころという扱いで、案件によっては部下や後輩の(時には先輩に対しても)指揮を執る、実動部隊の責任者になることもあれば、実動には関わらず、部下が担当した案件に決裁のハンコをつき、管理責任者として振る舞うこともある。
その一方で、上司や先輩の指揮の下、一人の兵隊として現場でひたすら実動に当たることもある。
どの立場も楽しいし、どの立場も経験することで、それぞれの立場に対する理解が深まって、仕事全体をうまく回せるようになる。

私は中途半端な立場だ。
上司や先輩との関係では、私はハラスメントの客体になる。
部下や後輩との関係では、私はハラスメントの主体になる。
私の方が指揮者、管理者、決裁者として、職務上大きな力を持っているから。
私が女性で、相手が男性であっても、私がセクハラ、パワハラ、その他もろもろのハラスメントをしうる側であることには変わりない。
もちろん、相手が同性であっても。

私は「女のくせに」という言葉が大嫌いだし、それと同じくらい「男のくせに」という言葉が大嫌いだ。
ただ女性だというだけで、常に被害者として振る舞うことが許されるというのは思い上がりだ。
ただ女性だというだけで、罪のない男性を傷つける言葉を発しても許されるなどという傲慢さは絶対に持ちたくない。
他方で、勘違いしきった男性から繰り出されるセクハラ、パワハラには腸が煮えくり返る思いを何度もしてきた。
なんで男だというだけで、こんなにも思い上がれるのかと心底不思議だったし、なんでこんな人がここまで生きてこられたんだろう、誰かの恨みを買ってこの世から消されていてもおかしくないのでは?と思うくらい失礼な仕打ちを受けることもあった。

それでも、新人だった頃は、自分のことだけ考えて適当にあしらっておけば良かったけれど、ぼちぼち後輩に女性が増えてきたので、自分の行動が後輩女性にどのような影響を及ぼすのかも考えないといけない。
毅然と振る舞うこと、怒ること。
自分だけでなく、自分の後に続く人のために。

向き合う相手によって自分の色が変わるなんて、まるでコウモリか何かのようだ。
でも、きっと誰しも多かれ少なかれ、そういう振る舞いをしなければならないようにできている。
それなら楽しく軽やかにやりたい。

性別にとらわれず、縁のあった人には誠実に、真剣に接したい。
優しさや気遣いをもらったときには、返したい。
たとえば、気弱で非力な男の人が部下になったなら、上司としてその人の良さを見つけて引き出したい。
口が裂けても、男のくせにだらしがない、情けない、なんて言いたくない。
自分が男性にされた嫌なことを、罪のない部下や後輩にぶつけて溜飲を下げるような、そんな不幸の連鎖、不幸の拡大再生産はしたくない。

女の人でも同じだ。
相手がどんな働き方、生き方を望んでも、それを尊重したい。
私がたまたま同性で、私がたまたま上司だからと言って、自分の生き方が唯一の正しい道のりだなんて相手にご高説を述べるような勘違いはしたくない。

属性にとらわれず、過去を引きずらず、ただただ素直に、目の前にいる人と向かい合いたい。
仕事はたかが仕事だけど、でもやっぱり人格の幾ばくかを懸けてするもので、そうやって取り組んだ仕事にはどうしたって、その人の生きざまが表れてしまうと思っている。