緊張と緩和と臆病と大胆

書きたいことだけ

劇場版キングダムが最高だった(前編)

日曜日にひとりで劇場版キングダムを見ました。
最高でした。


もうほんと、お願いだから、みんな見よう。

私は、未だに思い返すと高揚してしまうし、次いつ行こうかな~?と必死にスケジュール調整している有様です。
ちょっともうあまり体裁とか考えずに、ほとばしる思いだけ殴り書いていきます。

以下原作漫画及び映画の内容に一部触れるのでご注意ください。
とはいえ、こちらを読んでから劇場版を見ても支障はないと思います。
読まずに見てももちろん何も問題はない。

まずは、主要人物である信、漂、政とそれぞれの役者さんについて。
全て敬称略とさせていただきます。

信/山﨑賢人
主人公、信を演じた山﨑賢人。
とんでもねえイケメン。
漫画原作と言えば山﨑賢人、山﨑賢人と言えば漫画原作と連想してしまうほどの活躍ぶりだけに、雑にカテゴライズされた安易なキャスティングだったらどうしよう…と思っておりましたが。
いた。信がいたよ。
奴隷の身分から天下の大将軍へと羽ばたく、その第一歩を踏み出した信がいました。
原作の信は、目や口がかなり漫画的に大きく動くため、実写でやると違和感が出そうなのですが、そんなものはなかった。
じゃあ、違和感が出ないように控え目な表現になっているかというと、それも全くなかった。
山﨑賢人が目を見開き、口を歪め、怒りや憤りを叫び、そして顔中に皺を寄せ声を上げて泣く姿は、まさしく原作初期の、約束と激情に突き動かされて走り出した信そのものでした。
また、容赦のない粗野な振る舞いや、我流と一目で分かる剣の振るい方には、見ていて緊張感を覚えるほどでした。そこ、手加減しないんだと。

漂/政/吉沢亮
主人公の盟友である漂と、漂と瓜二つの若き王、政を演じたのは吉沢亮
とんでもねえイケメン。
そして、多くの方がすでに言及されているとおり、一人二役の演技がもう、本当に本当に素晴らしかった。
同じ顔なのに、違う顔。違う人。

信同様に奴隷の身分であった漂は、端正な顔が崩れるのもいとわずに、笑い、叫ぶ。
無邪気で、ときに可愛らしくすらあるけれど、内には強さと優しさを秘めた少年。
これに対し、王族たる政は、頬を動かさずに動く唇に、威厳を持って響くけれど抑制の効いた声。
つとめて淡々とあろうとしている、何重もの思慮のベールで自らを覆った、ぞっとするほど美しい男性。
また、二人の立ち振舞いや剣さばきも、それぞれの背景に基づいた、全く異なるものとなっています。
このような見事な演じ分けの中でも、特に目の違い、目線の演技は凄まじかった。
漂は、くるくるといたずらっぽく動く、丸くぱっと開かれた目。
目線は常に、目の前にいる人物や、今まさに向かうべき、直近の場所をひしと見据えている。
政は、悠然と構えて黒目の動きは控えめ、伏し目がちで切れ長の目。
目線はどこか遠く、目の前のファクトだけでなく、奪還すべき王都に、さらには統一すべき中華全土にまで向けられている。
目だけで人格を演じ分けている、素人にもはっきりと別の人間だと伝わる、この力。

劇中、漂と政の二人が対峙し、語り合うシーンがあります。
役者の技量によってはふざけたコントのようになってしまう、難しい場面です。
しかし、一人二役などとは全く感じさせなかった。
偶然にも顔が似ていただけの、それぞれに全く別の人生を生きてきた二人の人間が語り合っていました。
本当に同じ役者さんなの?漂と政のような二人が現実にもいて、その二人を連れてきたんじゃないの?と思わせるほどに。
二人は、互いに覚悟を決め、互いを認め合いながら、それを全く異なることば、表情、仕草で発露させていました。

そしてさらに、物語が進むにしたがって、政は一人の人間として、新たな顔を見せていきます。
特に終盤、成蟜と対峙したとき。
自ら抑制のベールを脱ぎ捨て、王としての振る舞いを後退させ、一人の人間としての感情を露にするその姿の、気高さ、凛々しさと言ったら。
吉沢亮、そら恐ろしいです。

また、これら主要人物のバランスも非常に良かった。
先ほど書いたように、本作の信は、まだ第一歩を踏み出したばかりの、奴隷出身の未熟な少年です。
原作の漫画が既に54巻まで発行されているのに対し、今回映像化されたのは序盤の5巻分に過ぎないのです。
山﨑賢人の信が、あまりに忠実に信であったがゆえに、奴隷上がりの粗暴さが悪目立ちしてしまい、観客が感情移入できずに引いてしまう(信がいた世界と同じように、彼が奴隷であることによって、善良な一般市民階層との断絶が生じてしまうわけですね)おそれがあるのではないかと案じていたのですが、そこをつなぎとめるのが漂の快活さであり、政の気品であったと思います。
ここでも、信を支え、羽ばたかせるのは、漂であり、政だったんだな。

次回は他の登場人物と役者さんについて書きます。
もちろん、おかいつのことも忘れてないです。
好きなものがたくさんあって嬉しいな。